「大樹」


小走りに近寄ると大樹がふわっと笑ってくれた。


「お疲れさま、仕事忙しかったみたいだけど大丈夫?」

「うん。大樹の方こそ大丈夫なの?」


私と同じ時間まで残業していたんだから大樹だって疲れているはず。


「俺は全然平気。でも花乃は無理するなよ。昨日の事も有るし」


労わって貰えて嬉しくなる。


冬の夜の街を二人並んでゆっくり歩く。

大樹は心配してくれてるけど、今の私は本当に疲れてなんていない。

心が弾んでいるせいか、身体も軽い。

クリスマス用に飾られたキラキラしたイルミネーション。見慣れているはずなのにとても綺麗に見える。


「何か食べてから帰る?」

「うん。お腹空いちゃった」

「よし。じゃあどこがいいかな?」


大樹はチラリと辺りを見回しながら言う。


「私行きたいお店有る。大樹の好きなものも有ると思うよ」


私の言葉に大樹は少し驚いた顔をしたけれど、その後直ぐに微笑んで「じゃあ、そこで」って言ってくれた。