「もしかして、大樹の過去の女を気にしてる?」


表には出していないつもりだけれど、私の態度の変化に井口君が気付いた様だった。

「別に……気にしてないよ」


大樹が誰と付き合おうが、大樹の自由……なんだから。


「じゃあ、社内の大樹のファンの女の方? どっちにしろ気にしないで大丈夫。花乃ちゃんは大樹にとって特別だから」

「何で特別なの?」

私と他の子と変わりなんて無いと思うけど。

怪訝な顔をする私に井口君が言った。


「詳しい事情は知らないけど、大樹は花乃ちゃんに負い目が有るんだろ? あいつちゃんと責任とって償うって言ってたから、花乃ちゃんを蔑ろにしないよ」

「……」


負い目って……やっぱり中学時代の件だよね?
責任って……私が恋愛苦手になってしまったこと?


大樹……そんな風に思ってたんだ。
私はあの真実を聞いて謝って貰った日に過去にしたつもりだったけど、大樹の中では終わってなかったのかな?

だから、私にいつも優しいし、気を使ってくれてるのかな?罪悪感からの行動なのかな?


……なんか、苦しい。嫌な感じだ。
気分が沈んで浮上出来ない。


沙希が戻って来たので私はゆっくりと席を立った。


「そろそろ帰るね」
「え? 花乃?」


何か言い足そうな沙希と井口君を残して、私は一人で店を出た。