「花乃ごめん、健が失礼で。でも悪気は無いからね、この人本当に花乃を可愛いって思ってるの」


沙希が井口君をじろりと睨む。

井口君はふっと笑って沙希の髪を優しく撫でた。

「妬くなよ」

「だって……」

沙希は滅多に見ない拗ねた様な表情をする。

沙希は怒ってるはずだったのに、この突然立ち込めはじめた甘いムードは?


もしかしたら、これが痴話喧嘩ってやつですか?


目前で繰り広げられる恋人同士のやり取りに圧倒される。


と言うか居たたまれない。


こういうのは、私の居ない時にやってください。


口を挟めないまま邪魔をしない様に、なるべく空気と同化していると、恋人同士の会話は済んだのか沙希が私に話しかけて来た。


「ねえ、須藤さんとの外出はいつになったの?」


何事もなったかの様ないつも通りのクールな口調。

突っ込む気にもなれず私は素直に返事をした。