そうやって待っていると約束の時間通りにインターフォンが鳴り、大樹が現れた。


うちの玄関の前に立つ大樹は、私のお洒落なんて霞んでしまう様な気合の入ったコーディネイト。

全身ブラックにシルバーのアクセサリーが映えてスマートで洗練されている印象だ。

顔は元々文句無く整ってるし、背が高くて足も長いし、あなたモデルか何かですか?って尋ねたくなる。


大樹と出かけるのに完璧なお洒落なんて要らないと思ったばかりなのに、急に自分の寂しい襟元が気になりだす。


そんな私の気持ちに気付く訳も無く、大樹はここ最近で一番の笑顔を私に向けて来る。


「花乃おはよう」

「……おはよう」


玄関を出て大樹の隣に立つ。


大樹は私の姿を見下ろしてから、とっても甘く微笑んで言う。

「花乃、今日凄く可愛い」

「えっ? そ、そう?」

「うん。見てると抱き締めたくなる」

「は? や、やめてよ変な事考えるの」


思わず後ずさりながら言うと、大樹は悪戯っぽく笑って私の手を取った。


「考えるのは止められないけど無理はしないから大丈夫」


大丈夫って、何それ?

全然大丈夫と思えないんですけど。

大樹は警戒度最高潮の私を引っ張り、門を出る。