「仕事帰りだけど」

「え?花乃の会社は五時半までだろ?……まさかこんな時間まで残業?!」


男はやたら大袈裟に驚いて言う。


なんで、私の仕事の就業時間を正確に知っているの?

プライベートを侵害された様な気分になり、私はかなり愛想なく言った。


「私、急いでるから」


さっさと立去ろうと、男の横を通り抜けようとした時、がしっと腕を捕まれた。


「な、何するの?!」


これにはさすがに声を大きくしてした。

叫ぶ私に男はヘラヘラした笑い顔だ。


「ちょっと待って。話が有るし」


私には一切無いんだけど!

腕を振り払おうとした時、強い視線を感じて私は動きをぴたりと止めた。


視線の元……彼の隣に目を向ける。


そこには夜目にもはっきりと分る程明るい色の髪をした女の子が居て、私をまるで敵でも見るような目で睨んでいた。


あ、この子の存在忘れていた。