結局私は何も答えなかった。


大樹はそんな私を責める事なく、力強い腕でフラフラする私を椅子から立たせ店から連れ出し駅へ向かう。


足元がおぼつかないけど大樹が支えてくれているから、倒れる不安はない。


「花乃大丈夫? 気持ち悪くない?」


心配そうに言う大樹の態度はいつもと変わらない。

さっきの出来事は夢だったのかも。そんな風に思える程。




私は電車で少し眠ってしまった様だった。

いつの間にか自宅最寄の駅に着いていて、大樹に起こされて支えられてホームに降りた。


ひんやりとした風が、頬を撫でる。

少し寝たせいか気分は大分良くなっている。

それでもまだ足元はフラフラしていて、

「花乃、気をつけて」

と大樹に肩を引き寄せられる。


大樹の身体にぴったり寄り添う形になり、なんだか凄い密着度。


でも何時もの様な嫌悪感は沸いて来なかった。

酔っ払ってるせいなのかな?


家迄の道をゆっくり歩きながら、私の肩を抱く大樹が言った。