王子様みたいなスマイルを浮かべる佐古君は、表情やオーラから良い人だってことが滲み出ている。


風斗もこれだけ優しい雰囲気に満ち溢れていたら……。


なんて思ったけど、風斗のそんな姿は想像がつかない。


風斗がそんなんだと、なんかちょっと怖い気もするし。



「ジュース買おうとしたけど10円足りなくてさー……あはは、ドジだよね〜!」



笑いたくもないのに、自分のうっかりミスを軽く笑い飛ばした。


そうでもしなきゃ、やってられない。


余計惨めな気分になりそうだった。



「あ、そうなんだ。じゃあ、そんな住田さんに俺からプレゼント」



「え?」



佐古君はポケットから何かを取り出すと、自販機の小銭の投入口にそれを入れた。


その瞬間、ジュースを選ぶボタンにランプがつく。



「もしかして、恵んでくれたの?ご、ごめんね、あとで返すから」



「別にいいよ、10円くらい」



ニッコリ王子様スマイルを崩さない佐古君。


あー、ホントに天使か何かじゃないかな。


風斗だったら「ふーん」って素っ気なく言って、素通りのパターンだよ。


それなのに、佐古君は助けてくれた。


なんて優しいんだろう。


ジーンとして感動しちゃったよ。



「ありがとう」



満面の笑みでそう返し、佐古君と並んで教室に戻った。



「おかえり〜!」



佐古君と戻って来たあたしを見て、美海がニヤッと笑った気がした。


席に着こうとしたその時ーー。



「アホ面して浮かれて、バッカじゃねーの」



囁くような小さな声が聞こえた。


ホントに小さな声だったから、美海や佐古君には届いていなかったようで。


隣からひしひしと視線を感じたあたしは、声のした方に顔を向けた。