再び腕時計を見たときは、夕方5時を少し過ぎた頃だった。
僕たちは車に乗り込んだ。
沢山買った紙袋はトラックに詰め、乗ってきた時と同じ席に座った。
僕の煙草はあと1本しか残っていない。
窓を少し開けて空気の入れ換えをした。
冷たい風が注ぎ込む。
でも僕は嫌いではない。
むしろ好きだ。
車の中は香水の匂いが混じっていて、不愉快だった。
何の匂いだろうと、鼻に集中して嗅いでみる。
しかし、わからなかった。
ピンク色の香りと言えばいいのだろうか。
うまく言葉に表現できない。
ただ僕には馴染めなかった。

僕らが働いている場所は、良い匂いなどしない。
エンジンの匂いに、煙、ガス。
すべて灰色の香り。
僕はそれに慣れすぎた。
普通だった。
だから、この街の空気が異常なほど綺麗で違和感を覚えた。
空は青い。
そこに、白い雲が散らばってたり、繋がってたり、模様を描く。
たまに飛行機雲も見える。
それは絶対に戦闘機ではないことがわかる。
昼の空では感じることが出来ても、夜の空では決して見ることが出来ない。
暗い暗い夜空が広がってしまう。
それはここにいても、向こうにいても同じ事だ。
チカチカと光るのは星ではない。
凡人でもわかることだ。