靴が汚れてしまった。
全く残念だ。
買ったばっかりだったのに、白い靴はすぐ汚れが目立つから嫌いだ。
泥。地面は茶色い。
けど、黒い。

何故男たちは銃で僕を撃たないかだって?
その答えは簡単だ。
男たちには僕を殺せない理由がある。
その理由が知りたいだって?
それも禁句だ。
僕にもわからないのだから。

「待て!止まれ!」
1人の男が声をあげる。

しかし、僕はその声など聞き流すだけ。
走ることはやめない。

腕に水。
一粒頭上から降ってきた。
その粒はあっという間に増えていく。
雨だ。赤い雨。
血の色。濁った色。
神の涙にしては汚い。
僕を祝福してくれている?
いや、その逆か。

僕に限界と言う言葉は似合わない。
可能性はある。
それを潰すか、利用するかは自分次第だ。

気が付けば、街の匂いも薄れてきた。
地面にも変化が出てきた。
見なくてもわかる。
感触。草の湿る音。
ピチャピチャと言う音は、雨なのに聞こえなくなった。
クシャクシャと踏まれていく草の音か。

目が慣れてきた。
手で草を切りただ走る。