コトン、とテーブルに置かれた二つのマグカップから
ココアの甘い香りと共に湯気が上がる。


それを手に取った玲は

「ありがと。」

そう言って、一口ココアを飲んだ。


テーブルを挟み、玲の前に腰を降ろしたあたしも
ココアを手にする。

マグカップから伝わる熱が
冷えた手に心地いい。



「何か久々だね、日和ん家来るの。」

「…うん、そうだね。」

大晦日だからか、窓の外はいつもより静かで
ツンとした、冬の空気が部屋の中にも入り込んでくるようだった。



「で?」

「…ん?」

玲がマグカップを置く。


「何があったの?あの日。」

「……………。」

あたしは、ココアを手にしたまま黙り込んだ。


ゆらゆら揺れるココアの表面に
自分の泣きそうな顔が、歪んで見える。




「話してみなよ。少しは楽になるでしょ?」

ポタリ、とココアを揺らしたのは
涙だったのか。


あたしには、わからなかった。