「おはよー。」

「久しぶりぃ!」

「夏休みどっか行った?」


笑顔が飛び交う教室。

昨日までの青空は消え
新学期の始まりは、朝から雨で塗り潰されていた。


夏の蒸し暑さに
この雨のせいで、ジメジメとした空気があたしの制服を撫でる。


教室のドア手を掛けて、大きく深呼吸をした。

大丈夫、そう心で呟き
一歩、躊躇いがちに中に踏み出す。



そして
開けた視界に教室を見渡して、ほっとした。





よかった…。
神楽くんまだ来てないや…。


会いたい、と思ってたはずなのに
ちゃんと笑える自信がなくて。

それでも、どこか期待してた自分がいたりして。


矛盾した感情を上手く処理出来ないまま、あたしは
先に登校していた玲に駆け寄った。