「ほら、間抜けだろう。」
なんて、一ノ瀬司は笑うものだから
私は不覚にも胸が高鳴った。
こ、これは心臓に悪いのでは……
頬に触れる一ノ瀬司の手。
頬だけに神経が集中して熱を帯びる。
ど、どうしよ……
何も出来ずジッとしていると、足下から"ニャー"と何やら音がした。
ニャー?猫?
恐る恐る足下を見ると、毛並みの良い真っ白な猫が一ノ瀬司の足に擦り寄っていた。
「ユキ、どこに隠れてた。探しただろうが。」
一ノ瀬司は私の頬から手を離すと
ひょいっと猫を抱き上げる。
ゆ、ユキ……?
ユキって、古賀さんが言ってたユキちゃん!?
「あ、あの…ユキちゃんって人じゃないんですか……」
「は?人だと?何を勘違いしている。ユキはこのペルシャ猫だ。」
一ノ瀬司はユキちゃんを優しく撫でる。
な、何だ……猫ちゃんか。
本当によかったよ……
「あんた誰よ!?」みたいに修羅場にならなくて。
なんて、ホッと一安心したときだった。

