懐かしい町並みを見ながら、ゆっくりとその足で歩いていく。


今更帰ってきて、お父さん、お母さんは何て思うだろうか。


『梢、お前は長女だ。婿養子でも貰って、この鉄工所を継ぐのが筋ってものだろう。大学なんぞ入れさせん!』



昔から考えが古く、堅いお父さん。

お父さんの言いなりにはなりたくなくて東京の大学に入学し、ろくに電話もしなかった娘を見て今更どう思う?



最後、出て行く時もお父さんは私に会おうとしなかった。



「……どんな顔して会えばいいの…」



反対押し切って大学入学したくせに、就職先が決まっていないだなんて……絶対言えない。



ここまで来てしまったけど、考えれば考えるほど怖くなる。



やっぱり、引き返そうかな……


そう思っていた時だった。



「あら?もしかして………梢ちゃん?」



後ろから、女性の声がして
私は振り返った。