や、やってしまった…
ワナワナと震えだす私を見て、司さんは不敵な笑みを浮かべた。
「なら、結構。折角、採用してやると言ったのに。この不景気の中内定ゼロは厳しいだろうな。この現代社会、大学に出たものの、就職出来ず4年間の奨学金を抱え生きていく若者が多い。奨学金を踏み倒しブラックリストに載らないよう、精々努力するんだな」
そう、司さんは言うと椅子から立ち上がる。
何なの……本当。
どうして私、この人にこんなこと言われなきゃならないの。
私の横を通り過ぎようとした時
彼は立ち止まって……
「あと一つ、面接に遅刻したのは今まででお前一人だけだ。」
頭上からの酷く低い声に
ドキッと心臓が嫌な音を立てる。
「自分のことも精一杯出来ていない奴が、つまらない正義感で他人を助けている暇があるのか。……精々甘ったるい人生だな?それだから面接を駄目にすんだよ」
彼はそう言い捨て、会議室のドアに手を伸ばす。
『大丈夫ですか。』
あの時、助けてくれた男性はこんなのじゃなかった。
どうして、どうしてそんなこと言うの?
あのときの私を助けてくれた男性なんでしょ?
面接を遅刻してしまったことはいけないことだ。
人生かかってるんだもん。
でも、でも……
何かの犠牲を払ってでも
誰かを手助けすることはいけないことですか…?

