この声はどこかで……
意を決してドアを開けると、円卓形式の机の中心
立派な椅子に腰を掛けた男性が目に飛び込んだ。
こ、この人……
『大丈夫ですか。』
あの心地よい声。
あの時、助けてくれた……
長身、黒髪で眼鏡をかけた端正な顔立ちの男性だった。
でも、今は眼鏡をかけておらず
どこかまた違った印象を私に与えた。
「あ、あの、私、安藤梢と言います。せ、先日はありがとうございました!」
まさか、あの時の男性が一ノ瀬グループの関係者だったなんて…
深く頭を下げ、ゆっくり顔を上げて男性を見るとどこか冷たい瞳が私を捉えた。
あれ、何だか前の雰囲気と違うような……
もしかして、前のこと忘れてる?
ぼーっと男性を見つめていると、容赦なく睨まれる。
「そこへ掛けろ」
男性はピシャリと一言零すと、目の前の椅子を指した。

