都内では一番大きく目立つ一ノ瀬グループ本社。
さすが、大企業。
ため息が出るほどの迫力だ。
これ、何階まであるんだろ。
雲まで続いていそうなビルを見上げては、またため息。
やっぱり怖い……面接をすっぽかした会社に自らその土地に行くなんて……
警備万全で警備員があちらこちらにいる。
こんなところでウロウロしてても怪しいだけだよね。
警備員さんに訳を言って中へ入れてもらう。
大きなビルの中へ入ると、受付員の女性を見つけた。
「あの、お電話を頂いた安藤、梢です…」
「はい、安藤梢様ですね。お待ちしておりました。」
電話の相手だったのだろう村井さんという女性は営業スマイルで私に微笑んだ。
「そちらのエレベーターから28階まで上がって頂いて、エレベーターを出てすぐ右の会議室に御入りください。司さんがお待ちです。」
村井さんはエレベーターの前でそう説明するとぺこりと頭を下げた。
つ、司さん?
誰ですかね、その人……
私は訳がわからぬまま、エレベーターに乗り込み28階を目指す。

