って、何思い出の地を振り返るみたいになってるんだろ。
そんな自分に呆れて、笑ってしまう。
でも、名前くらい聞いておけばよかったかも…
横断歩道を渡りきり、紗栄子のアパート目指し歩いていると
突然、スマホの着信音が鳴り響いた。
もしかして、紗栄子かな…?
帰りに醤油買ってきて〜とか?
鞄からスマホを取り出すと、紗栄子の表示ではない、見知らぬ番号が並んでいた。
だ、誰かな…
恐る恐る、通話ボタンを押すと……
「こちら、安藤梢様のお電話でしょうか?」
聞き覚えのない、女性の声がした。
「は、はい……そうですけど……」
ま、まさか、詐欺とか!?
いや、まさかね……
スマホを持つ手が思わず強くなる。
「こちら一ノ瀬グループの本社受付を担当しております、村井と申します。いきなり申し訳ないのですが、今から本社に来てはもらえませんか?」
………え?
今から……一ノ瀬グループに?
な、何で?
もしかして……面接に遅刻したのは今までで私だけでこんな不名誉なことはないと…叱られる…とか。
考えただけでおぞましい。
私は不安に思いながらも、行かせてもらいますと返事をした。

