「お待ちしておりました。一ノ瀬様。どうぞこちらへ。」
高級感溢れる旅館のフロントには沢山の仲居さんと、綺麗な女将さんが出迎えに嘘でも夢でもないことが嫌でも実感できた。
本当に泊まるんだよね……?
司の仕事の予定と私の大学の授業とで、中々合う時間がなく彼の仕事が空いた夕方から急遽温泉旅館に向かうことになった。
会長の命令となれば、司も何も言えないみたいで……
仲居さんに案内されたのは本館とは離れの部屋。
中へ入れば驚くほど広く豪華で、露天風呂までもがあった。
自然に囲まれて露天風呂か……
豪勢だな〜。
仲居さんは丁寧に設備の説明をすると品良く微笑んで部屋を後にした。
当たり前だけど部屋には二人っきり。
変な汗が背中を伝う。
いつものマンションとはわけが違う。
ユキちゃんだって古賀さんに預けていないわけだし……
何たって、旅館だよ!?
同じ部屋で一晩過ごすんだよ!?
そ、そんなの……
「おい。」
そんなの心臓がもたな……
「何ボケっと何突っ立ってる。口開いてるぞ。」
…………え?

