「だが…ワシはいつまで生きているのかわからん。ひ孫の顔を早く見せてほしいのだよ。」
ひ、ひ孫!?
落ち着かせるために飲んだコーヒーを危うく吹き出しそうになるところだった。
「会長、その話は………」
司の表情を伺うと、呆れたような顔で会長から顔を逸らした。
「今は授かり婚も珍しくない。一緒に暮らしてるんだ。そういうことがあるかもしれんだろ。」
ちょ、ちょ!!?
な、何を言ってるのですか会長さん!?
寝室も別だし、そんなことあるわけ……
っていうか、まずこれは偽装なわけで……
なんて、言えるわけもなくて。
「何だ?二人は上手くいっていないのか?」
俯いている私を見て会長は詰め寄るように言う。
「い、いや〜〜そういうわけでは……」
慌てて否定したのが悪かったのか、会長は怪しそうに私たちを見つめる。
「まあ、いい。外なら環境が変わる。ぎこちないその距離も近まるだろう。」
そう言って会長は立ち上がると、デスクの引き出しから何かを取り出し私たちに差し出した。

