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深夜の0時を過ぎた頃、やっと帰路についた。
プロジェクトで忙しくなってからは会社で寝泊まりすることがあったが、今は真っ直ぐマンションに帰る。
家に誰かがいるというのは思ったよりそんなに悪くない。
朝は包丁の音と、たまに慌てるあいつの声で目覚める。
空虚だった生活があの女がきてから一変した。
朝は忙しくて朝食なんてとっている暇なんてなかった。
体調を気にしてくれる周りの者はいなかった。
それが今は、毎日一緒に朝食をとって
今日は天気がいいとか、昨日テレビで何が面白かったとか、大学の単位がやばいとか
そんな他愛のない話を一方的にあいつが喋る。
客観的に見れば、ただ朝からうるさいだけだ。
でも、その空気すら心地いいと思っている自分がいた。
そっと、ドアを開けると案の定玄関以外は真っ暗。
玄関を進んですぐのあいつの部屋は少しドアが開いていた。
「………阿保か。」
鍵閉めて寝るんじゃなかったのか。
この俺だからいいものの、変な奴なら襲われてるぞ。
音を立てずそっとドアを閉める。

