「知らなかったよ、安藤鉄工所に娘がいるなんて。もしあんな可愛い子がいると知ってたら、契約切ったりしなかったのにな〜〜なんて。」
フンッ、今更気づくとはな。
逃した魚は大きいってか?
「今更、お前に引き渡すつもりはない。あいつは俺の婚約者だ。」
「ははっ、言うね〜〜ほんと、今までの司くんじゃないみたい。そんなに梢ちゃんが大切なんだ?」
気安く下の名前で呼ぶな。
なんて、ちょっとしたことで苛々が募る。
「ねぇ、どうして彼女と婚約したの?元々須藤財閥令嬢との話が上がっていたのは俺の耳にも入ってたよ。それを蹴って彼女と結婚することに何か思惑でもあるの?それともただ……彼女を助ける為に婚約までしたの?」
振り返ると、真剣味を帯びた瞳と目が合う。
「正直、一ノ瀬グループにとって彼女と一緒になることは何のメリットもないでしょ。会長が許したとして、社長は黙ってないと思うな。」
相園は持ってきていたらしい週刊誌を見つめたまま呟く。
「君はどうしても困っている子を見過ごせない。変わってないね、5年前と。冷静沈着で仕事は出来るし人望もある。でも、君の唯一君の弱点はそこだよ。」
「………何が言いたい。」
思わず詰め寄ると、相園はフッと笑った。
「ううん。何にもないよ。」
なんて相園はニコリと微笑むと応接室を出て行った。

