ヘラヘラ笑みを浮かべるのは相園 誠二。
わざわざここまで足を運ぶなど、お前の会社は暇なのか、この男がただ仕事をしていないだけなのか。
まあ、そんなことはどうでもいい。
「何の用だ。俺は忙しい中仕事を抜けてきた。わざわざ呼び出すとは相当重要な用件なんだろうな。」
鋭い視線を送ると相園はコーヒーカップをソーサーに置いた。
「そんな怖い顔しないでよ。パーティーではさ、ほらあんまり話す機会なかっただろ?ちゃんと時間つくって一ノ瀬の坊ちゃんと話がしたいなーって。それだけじゃ重要な用件にならない?」
なんて、ニコリと微笑む。
何がちゃんと時間つくって話がしたい、だ。
別れる寸前のカップルか。
馬鹿馬鹿しい。
「生憎、悠長に世間話する暇はない。相手なら他をあたってくれ。」
ソファーから立ち上がり、ドアノブに手を掛けたとき相園はポツリと呟いた。
「君の婚約者の安藤梢ちゃん。鎌倉の安藤鉄工所の長女なんだってね。」
その言葉に思わず手を止める。
「週刊誌見てそりゃビックリしたよ。なんたって俺が契約を切った鉄工所だったからね。」
振り返ると、さっきと変わらず笑みを浮かべる相園がいた。

