幾つか来客者たちに挨拶をして回ったとき、ようやく手帳の意味がわかった。
挨拶回りにいくから、顔と名前を把握しろ…と。
ここぞとばかりに社交の場を広げ、深める。
きっとこういうパーティーは全部そうなんだろう。
私が考えていたパーティーとは程遠い。
お堅い記念パーティーとは言えど、今日は司の誕生日でしょ?
なのにその本人が全く楽しそうじゃない。
これが当たり前なんだろうけど、口から出るのは仕事の話ばかり。
もっと営業スマイルなんかじゃなくて、本当の笑った顔が見たいのに……
気後れした私は、会場に繋がるバルコニーに出た。
夜風に当たって頭を冷やす。
これが彼の普通なんだよね……
やっぱり住む世界が違いすぎるよ……
婚約者のフリとはいえど、嘘を吐くのは疲れる。
「お腹空いたなぁ……」
なんて、周りに誰もいないことに安心し思わず呟くと……
「ハハッ、そんなにお腹空いてるの?」
背後で笑う声がした。

