「久しぶりだね、司くん。随分立派になられて。ホテル業をメインに動いているそうだね。君をリーダーに海外でのプロジェクトが行われてると小耳に挟んだよ。」
と、とうのさん、党乃さん……
相手に見えないよう司の背中で手帳を捲ると党乃さんの顔写真を見つける。
帝党ホールディングス社長の党乃(トウノ)さん。62歳。
ホテル業界のトップに君臨する帝党ホテルの代表……って、テレビで見たことがあるような。
「そちらのお嬢さんが司くんの相手の方だね?随分とお綺麗だからどこかのご令嬢かと思ったよ。」
党乃さんは品良く微笑み私を見つめた。
「会長殿がこの婚約を認めたとして、あの総一郎殿が納得したとは到底思えんのだがね。」
総一郎さん?
慌てて手帳のページを捲るもその名前が記載されている訳もなくて。
もしかして、総一郎さんって一ノ瀬総一郎?
一ノ瀬グループ就職説明会のパンフレットに載っていた凛々しい顔立ちの社長が脳裏に浮かぶ。
司の……お父様、だよね。
まだ顔を合わせたことはないけれど。
チラッと司を伺うとまるで無表情だった。
この感情がないような表情、久しぶりに見た気がする。

