履き慣れていないヒールのせいか前につんのめりそうになる。
その度、司がさり気なく支えてくれ、私は何とか中央にあるステージまで歩くことが出来た。
記者なども多く招待されていたらしく、眩いシャッターライトが降り注ぐ。
テレビや雑誌で取り上げられるほど有名な海外の大企業の社長や、総資産数兆円だという一代で築き上げた女社長など大物が顔を揃えている。
一ノ瀬グループの御曹司が婚約発表となればここまで業界が動くのか……。
今更だけど、事の重大さにますます身体が震えて固くなってしまった。
に、逃げ出したい……今すぐにでも。
こんな所に凡人女が紛れ込むなんて場違いすぎる。
彼はどうして私を婚約者に選んだの?
今でもその疑問が頭の中をループする。
借金抱える凡人女より、契約すんなりしてくれそうな令嬢を探したほうがよかっただろうに…
『俺が決めた相手はお前だ。……お前以外考えられない。』
何度も言わせるなと彼は言うけれど
私は不思議で仕方なかった。
チラッと隣を見ると、いつになく真剣な仕事モードの"一ノ瀬司"が。
彼はそっとマイクを持つと口を開いた。

