広い会場では丁度この前助けたお爺さん、会長さんが挨拶をしていた。
「今日は、一ノ瀬グループ60周年記念パーティーと称しておりますが、この日9月26日は孫である司の誕生日です。それに伴い、この場をお借りして司の婚約者をお披露目したいと思います。」
………ん?
誕生日、だったの?
チラッと隣を見るけれど、彼はどうってことなさそうだ。
まるで、誕生日なんてどうでもいいかのように感じられた。
「……余計なことは考えなくていい。黙って笑っていればすぐ終わる。」
一ノ瀬司……司はそう言うと、私の手を優しく取る。
今から大勢の前で嘘を吐くんだ。
私たちは共犯。
もう戻れないし、戻るつもりもない。
彼の手を掴み、静かに頷いて賑わう会場に一歩踏み出した。
眩いライトに照らされ、大きな拍手喝采が私たちを包んだ。
「どこのご令嬢だ?」「どこの企業と契約を交わしたんだ?」
なんて言葉がちらほら聞こえてくる。
何も考えず笑顔でいれば終わるってそんなの……無理でしょ!!
既に私の脚は震えていた。

