お父さんは頭を上げたものの、私の顔を見ようとはしなかった。
「必ず、傷一つ付けずお返しすると誓います。」
今度は一ノ瀬司が頭を下げる番だった。
端から見れば、まるで結婚の承諾をもらいに頭を下げているよう。
大の御曹司が易々と頭を下げるだなんてね。
あの俺様で強引でかなり横暴な様からは想像出来そうにないのに……
私も同じように彼の隣で静かに頭を下げた。
「………今日はもう遅い。泊まっていきなさい。」
お父さんは立ち上がるとそれだけ言って居間から出て行ってしまった。
許してくれたわけじゃ…ないよね?
ポカン、としているとお母さんがにっこりと微笑む。
「お父さんってば本当素直じゃないわよね〜。ご飯が冷めちゃうわ、早く食べちゃって!おかわりたくさんあるからね〜〜」
なんて、お母さんはお茶碗にご飯を沢山入れた。
一ノ瀬司も愛想良く受け答えし、鯖の味噌煮に手をつける。
あれ……一件落着、なの?

