相当色んな会社を回ったのだろう、その顔には疲労が感じられた。
「お父さん、梢は私が呼びました。色々話すことがあると思ったので…」
お母さんは遠慮がちに言うところを見て、今日私が来ることをお父さんは知らされていなかったのだと悟った。
「急に来てごめんなさい。お父さんに話が…」
「…………お前のいる場所はここじゃないと、この前言ったはずだ。」
厳しく、酷く冷たい瞳に動けなくなる。
「頼んでもいない余計なことをしよって……恩を売ってるつもりか…それで何もかも帳消しにしたとでも思ってるのか」
恩を売るだなんてそんな……
「何もかも帳消しになんて思ってないよっ!私はただ、みんなを助けたくて……!」
「何が助けるだ?俺の反対を押し切ってこの家を出たお前がよくそのような言葉が言える…っ!」
大きな手が振りかざされる。
お母さんの甲高い声がして、咄嗟に強く目を瞑った。
だけど、この前と同じような痛みは感じなくて……
「手をあげるのは、父親として如何なことかと思います。」
叩かれる寸前、一ノ瀬司は間一髪でお父さんの腕を掴む。
「彼女は何一つ悪くありません。全ての責任はこの私にあります。少し、私の話を聞いては頂けないでしょうか。」
そして、お父さん腕をゆっくり下ろすと、淡々と言った。

