私の好きな料理ばかり……
「梢、鯖の味噌煮好きだったでしょ?筑前煮もたくさん作ったのよ。あまりご馳走っていうご馳走じゃないけど、一ノ瀬さんもこちら座ってくださいな。」
お母さんは嬉しそうに微笑む。
久しぶりに家族揃うんだもんね……
「あれ、……お父さんは?」
でも、さっきからお父さんの姿が見えない。
「お父さん今ね、元請け会社に仕事をもらえるか頼みに回ってるのよ…….もうすぐ帰ってくるんじゃないかしら。」
さっきまでにこやかにしていたお母さんは表情が暗くなる。
リストラで多額の借金を背負ったんだ。
借金返済したところで仕事が元に戻るわけじゃない。
お父さんが守ってきた鉄工所を救ったことにはならないんだ。
私の考えは迂闊だったかもしれない。
座布団に腰を下ろすと、玄関の扉が開く音がした。
「母さん、外に車が止めてあったが誰かお客さんでも………」
そう、居間に入ってきたお父さんは私を見て言葉を失う。
いつも作業服だったお父さんには珍しくビッシリとスーツを着て、手には受け取られずに残ったのだろう菓子折りらしい紙袋を持っていた。

