広いオフィスの奥にガラス張りの部屋がある。
今はブラインドで中は見えないが、一ノ瀬司はそこにいるのだろう。
ノックをして中に入ると、パソコンと睨めっこしている彼がいた。
やはり、仕事中だからか眼鏡を掛けている。
「……麗香さんが今後の予定の書類を…」
一ノ瀬司は私なんて見向きもせず、パソコンの画面を見つめたまま。
『仕事中だ、気安く声をかけるな』
『デスクの端っこに置いとけ、気の利かんやつめ』
なんて、言いそうだ。
なんとなく、彼の言いそうなことが予想できるようになってしまっていた。
仕事中の彼はいつになく真剣で、寄せ付けないオーラがある。
これ以上ここにいたら何言われるかわかんないよ……さっさと帰ろう。
失礼しました、とドアに手を掛けたとき。
「お前、WordやExcelを使えるか。」
なんて、一ノ瀬司は突然そんなことを言った。
ワードやエクセル?
「高校生の頃に一応……」
高校生の頃のビジネスパソコンの授業に何度か……
ビジネス文書検定だって受けたことあるし。
……って言っても時間足らずで落ちたけど。
曖昧な態度の私を見て、一ノ瀬司は溜息をつく。

