何も聞かされず車に乗ると、一ノ瀬司は車を出発させる。
会社に私を連れて行くって言ってたけど、どうして私?
車内は静まり返って何も喋る雰囲気ではなかったので何も聞けなかった。
それにしても、今は眼鏡かけるんだ。
仕事とそうでない時と区別するためなのだろうか。
特別、目が悪いってわけじゃなさそうだし……
助手席から見える綺麗な横顔。
シルバーの細いメタルフレームの眼鏡はどこぞの執事みたいで何だか紳士的に見える。
ふと、その横顔に初めて出会った時のことを思い出す。
心地の良い透き通った声。
柔らかい微笑み。
まるで、黒髪の王子様。
でも、まさか中身は強引で冷血な鬼だったなんてね……
ジッとその横顔を見つめていたことに気づいた一ノ瀬司は冷たい視線を私に向けた。
「……何か珍しい物でも見えるか。」
「い、いえ………」
あの物腰の柔らかい雰囲気は何処へ?
私はやっぱりこの人が苦手だ。

