お世辞にも、魔王が教師に向いているとは思えない。


 見下していることがありありと表れた口調は、問題教師そのものである。


 それでも何処か憎めないのが、魔王の不思議なところなのだ。


「バカか、お前ら」


と、二言目には言われていても、魔王を嫌う人間は少ない。

むしろ「面白い先生」という感覚である。


 B組の面々は、魔王に服従している。

言われたことの九割も、脳味噌に留められない。

魔王が放った「呪詛」宛らの暴言も、数秒後には脳内で完全消去である。

故に、魔王が何を言い放っても問題にはならないのであろう。


「このクラスにマトモなヤツはいねえのか」


と、呟いた魔王には、少しばかり同情してやっても良いかと思う。




 帰りのSHRで男子生徒たちに冷たく暴言を浴びせてから、


「バカの掃き溜めだな、このクラスは」


と、吐き捨てた魔王の背中に向かって、私は思う。

本日もお勤めご苦労様でございました、と。