オフィスにラブは落ちてねぇ!!

今度はまともな男と、まともな恋愛をしようと思いながら、付き合わないかと誰かに言われても、過去の恋愛の失敗を考えるとそれもまた面倒で断り続け、かれこれ1年半ほど彼氏がいない。

特に今すぐ彼氏が欲しいと思っているわけではないが、26にもなったのだから、もうそろそろ将来を見据えて行く必要もあるかなとも思う。

だけど、いまだに残る心の傷が、それを受け入れようとしない。

(とは言え、いつまでも過去に縛られて前に進めないってのもな…。どっかにいい出会い、落ちてりゃいいのに…。)



カウンター席でウイスキーの水割りを飲んでいた愛美の隣に、一人の見知らぬ男が座って笑いかけた。

(誰…?見ない顔…。)

「あのさ…良かったら一緒に飲まない?」

ギラギラと獣のように愛美を見つめるその目から、明らかに下心が透けて見える。

(なんだ?酒の勢いで私を口説こうとでも?でも残念だねぇ…嫌いなタイプなんだよ。)

「明日も仕事あるし、これ飲んだら帰る。」

「そう言わずにさ、もう1杯だけ、一緒にどう?」

突然手を握られ、愛美は全身の毛が逆立つような悪寒を感じて、慌てて手を引っ込めた。

(キモッ!!気安く触んなバカ!!)

「触んないで。帰る。」


愛美は仏頂面で席を立ち勘定を済ませると、店の外に出て駅に向かって歩き出した。

男は愛美の後を追いかけてきて、ピッタリとへばりつくようにして愛美の横を歩く。

「逃げなくてもいいじゃん。一人でこんなとこで飲んでるなんて、どうせ男待ちなんだろ?」

「違うから。どっか行って。」

「かわいい顔して気が強いんだな。」

男はニヤニヤしながら愛美の腕を掴んだ。

「離して!!」

「俺、気の強い女は好き。大人しくさせたくなる。」

「私はオマエみたいな男は嫌いだ、離せ!!」

愛美が必死で男の手を振り払おうとしていると、後ろから背の高い誰かが手を伸ばし、その手を愛美の腕からほどいてひねり上げた。