愛美は自宅の最寄り駅の2つ手前で電車を降りて、マスターの店に寄った。
平日なので店は空いていて、テーブル席に常連客のグループが1組と、カウンター席にカップルが1組いるだけだった。
「愛美ちゃんいらっしゃい。今日はひとり?」
「今日も、でしょ。ギムレットちょうだい。」
「今日は水割りじゃないんだ。珍しいね。」
「気分転換したいの。」
「ふーん?何かあった?」
「なんにもないよ…。」
愛美はカウンター席に座り、頬杖をついた。
マスターがギムレットを差し出すと、愛美はゆっくりとグラスに口をつけた。
「政弘は?」
「……知らない。」
「ふーん?この間、政弘しょげてたよ。愛美ちゃんに嫌われちゃったみたいだって。」
「支部長なんか元々嫌いだし。」
愛美はふてくされた顔でグラスを傾けた。
「嫌いなのは支部長の政弘だろ?普段の政弘も嫌い?」
「……好きとか嫌いとか言えるほど知らないもん。」
「そっか、デートドタキャンされたから?」
マスターの思わぬ言葉に、愛美は驚いて目を見開いた。
「知ってるの?」
「得意先の社長さんが事故で怪我して入院したらガンが見つかったって奥さんから連絡があって、手続きに行ったって言ってたよ。」
「今日、その奥さんから電話があった。」
「新入社員の頃から世話になってる社長さんらしいな。ガンだって聞いて、居ても立ってもいられなかったんだってさ。慌てて駆け付けたけど、思ったより元気そうで良かったって言ってた。」
「そう…。」
話を聞こうともせず、緒川支部長の気持ちも考えないで、一方的に大嫌いだとか別れるとか言ってしまった。
あれほど好きだと言っていたのに急に素っ気なくなったという事は、わがままな自分にがっかりして熱も覚めてしまったのだろうと思うと、愛美の胸がチクリと痛む。
(何これ…。)
平日なので店は空いていて、テーブル席に常連客のグループが1組と、カウンター席にカップルが1組いるだけだった。
「愛美ちゃんいらっしゃい。今日はひとり?」
「今日も、でしょ。ギムレットちょうだい。」
「今日は水割りじゃないんだ。珍しいね。」
「気分転換したいの。」
「ふーん?何かあった?」
「なんにもないよ…。」
愛美はカウンター席に座り、頬杖をついた。
マスターがギムレットを差し出すと、愛美はゆっくりとグラスに口をつけた。
「政弘は?」
「……知らない。」
「ふーん?この間、政弘しょげてたよ。愛美ちゃんに嫌われちゃったみたいだって。」
「支部長なんか元々嫌いだし。」
愛美はふてくされた顔でグラスを傾けた。
「嫌いなのは支部長の政弘だろ?普段の政弘も嫌い?」
「……好きとか嫌いとか言えるほど知らないもん。」
「そっか、デートドタキャンされたから?」
マスターの思わぬ言葉に、愛美は驚いて目を見開いた。
「知ってるの?」
「得意先の社長さんが事故で怪我して入院したらガンが見つかったって奥さんから連絡があって、手続きに行ったって言ってたよ。」
「今日、その奥さんから電話があった。」
「新入社員の頃から世話になってる社長さんらしいな。ガンだって聞いて、居ても立ってもいられなかったんだってさ。慌てて駆け付けたけど、思ったより元気そうで良かったって言ってた。」
「そう…。」
話を聞こうともせず、緒川支部長の気持ちも考えないで、一方的に大嫌いだとか別れるとか言ってしまった。
あれほど好きだと言っていたのに急に素っ気なくなったという事は、わがままな自分にがっかりして熱も覚めてしまったのだろうと思うと、愛美の胸がチクリと痛む。
(何これ…。)



