オフィスにラブは落ちてねぇ!!

朝礼を終え営業職員のオバサマたちが営業先に出掛ける準備をし始めた頃。

緒川支部長は新人職員の支部研修をしていた。

「アンケートは記入してもらったら速やかに入力するように。パソコンのトップ画面から“アンケート管理”を選んで…。」

個人情報の管理の仕方や、保険設計書の作り方、生活設計書の作り方などを、モデルケースの試算をして見せながら説明した。

それから契約手続きの際の入力方法や注意点を説明する。

「契約手続きをする時には必ず約款を渡すのを忘れないように。」

「支部長、約款ってどこにありますか?」

「ああ…約款は内勤席の横の棚に…。」

不意に空っぽの内勤席が目に留まり、緒川支部長は一瞬黙り込んだ。

「支部長?」

「ああ…。DVD版があの棚の引き出しに、冊子はその隣に商品ごとに並べてあるから。DVDより冊子がいいってお客さんもいるから、一応両方用意しておくといい。くれぐれも商品名を間違えないように。」

緒川支部長は大まかに説明を終えると腕時計を見た。

「…そろそろペア活動の時間だな。先輩にしっかり教わって来るように。」

「ハイ。ありがとうございました。」

新人たちが席に戻ると、緒川支部長はため息をついた。

出社時間を大幅に過ぎても愛美はまだ来ていない。

緒川支部長は、ちょうど席に戻ってきた峰岸主管に声を掛けた。

「峰岸主管、菅谷から欠勤の連絡あった?」

峰岸主管が答えるより先に、その隣の席の高瀬FPがひょこっと身を乗り出した。

「菅谷さんなら熱があるのでお休みだそうですよ。さっき、営業部長から内線で連絡がありました。風邪ですかね?」

「……そうか。熱で休みか。」

緒川支部長は小さく呟いて、パソコン画面に視線を移した。