オフィスにラブは落ちてねぇ!!

高瀬FPが電話口に向かうと、緒川支部長が尋ねる。

「なんか用事あったのか?」

「中沢商店の社長が入院されてるので、お見舞いに果物でも買って行こうと思いまして。ちょうど菅谷さんがコーヒーの買い置きを買いにスーパーに行くそうなんで、ついでに荷物持ちでも手伝おうかなって。」

「……俺が行く。果物買って来ればいいんだな?」

「ハイ、すみません。お願いします。」

高瀬FPは笑いを堪えているのが緒川支部長にバレないように頭を下げて、電話に出た。

緒川支部長が席を立って愛美のそばに歩いてくる。

「…高瀬の代わりに俺が行く。」

半ば呆れながら、愛美は小さくため息をついた。

(あからさまなのはどっちだよ?!)

「一人で大丈夫ですけど。」

「いや、行くって言ったら行く。ホラ、早くしろ。」

緒川支部長はさっさと支部を出てエレベーターホールに向かった。

愛美はその場でため息をついて、電話で話している高瀬FPを見た。

高瀬FPはニコニコ笑いながら愛美を見てうなずいた。

(……何それ?支部長と行けって?!)

「菅谷ー!早く来い!!」

廊下の先で呼ぶ緒川支部長の声に愛美はまたため息をついて、仕方なく緒川支部長の後を追った。


愛美の勤める支部のオフィスが入っている営業部のビルを出て、愛美は緒川支部長と少し距離を開けて歩いた。

(なんでいちいち構うかな…。高瀬FPとはなんにもないのに…。)

支部のオバサマたちに変に思われていないだろうかとか、高瀬FPの意味ありげな笑顔はなんだろうと考えながら、下を向いて歩いていた愛美は、急に立ち止まった緒川支部長にぶつかった。

「わっ…!!なんで急に立ち止まるんですか!!」

「…悪い。」

「だいたいなんで支部長自ら、支部の備品を買いに行くんです?おかしいでしょう。」

「…高瀬の方が良かった?」

「そういう事を言ってるんじゃありません!!」

「……ごめん、高瀬と二人きりにさせたくなかった。」

「はぁ…?もういいです。」