オフィスにラブは落ちてねぇ!!

翌朝。

いつも通りに出社した愛美は、更衣室で制服に着替えながら、どんな顔をして緒川支部長に会えばいいのだろうと考えていた。

成り行きとは言え、緒川支部長と付き合う事になってしまった。

“酔っていたから覚えてない”とでも言ってシラを切ろうかとも思ったが、夕べの緒川支部長の切なげな声が頭から離れない。

(確かに仕事中の支部長は大嫌いだけど…夕べはホントに別人かと思った…。)

少しだけ、本当の緒川支部長がどんな人なのか知ってみたい気もする。

(でもなんで?)

不可解な自分自身の考えに戸惑いながら更衣室を出て支部に向かった。

(とりあえず…職場ではいつも通りにしていよう。)


「菅谷さん、おはようございます。」

エレベーターを降りたところで、高瀬FPに声を掛けられた。

いつも通りににこやかな笑顔を向けられ、愛美もつられて微笑む。

「おはようございます。」

「昨日の夜にもらった契約の書類、内勤席に置いてますのでお願いします。」

「わかりました。」

高瀬FPと一緒に支部に入ると、支部長席でパソコンに向かっていた緒川支部長が画面から微かに視線を外した。

しかし眉間にシワを寄せ、再び画面に視線を移す。

「おはようございます。」

「おはよう。」

こちらを見もしないで挨拶をする緒川支部長の態度にカチンと来る。

(何あの態度…。やっぱ嫌い…!!)


昨日の事は気の迷いだったのかも知れないと思いながら、愛美は内勤席に着いて高瀬FPに頼まれていた書類に目を通した。

仕事中の緒川支部長と夕べの緒川支部長が、どうしても結び付かない。

支社にいた時の緒川支部長も全然覚えていない。

一体どれが本当の緒川支部長なのか、さっぱりわからない。

(酔ってたとは言えどうかしてたな…。とりあえず何回か食事でもして、やっぱ無理って言えばいいや。)

そんな事を考えながら、愛美は書類の確認を終えて席を立った。