オフィスにラブは落ちてねぇ!!

執拗に耳を攻められた愛美は、全身の力が抜けて頭が真っ白になってしまい、緒川支部長の腕から逃れられずにいた。

「俺と付き合うならやめてやる。」

「や…だ…。」

「じゃあ…もっと…?」

反対側の耳も指先で刺激され、愛美はもう立っていられなくなって緒川支部長の背中にしがみついた。

「俺と付き合う?」

耳元で囁く緒川支部長の低い声にどうにかなりそうになりながら、愛美はとにかくこの場を切り抜けようと、屈辱ではあったが力なくうなずいた。

「じゃ、今日からオマエ、俺の彼女な。」

ようやく解放されるとホッとしたのも束の間、緒川支部長は愛美の頬にキスをした。

(いーやーっ!!)

「イヤって言わせねぇから。」

そう言って緒川支部長は愛美の頭を引き寄せるようにして、強引に唇を塞いだ。

(ギャーッ!!イヤーっ!!やめてーっ!!)

やっと唇が離れると、愛美は緒川支部長をにらみつけて、怒りに震える拳でみぞおちを思いっきり殴った。

「イヤがってる相手に無理やりこんな事するなんて最低…。絶対イヤです。」

思いのほか強烈にヒットしたらしく、緒川支部長はみぞおちを押さえて苦しそうにしている。

「普通…女がみぞおち殴るか…?」

「まだ殴り足りませんけどね。とにかく私は支部長と付き合う気なんてまったくありません。」

「付き合うって言っただろ?」

「一言も言ってません。そういうところが大嫌いです。2度と私に構わないで下さい。」

愛美は必要なパンフレットを手に、さっさと倉庫を後にした。