オフィスにラブは落ちてねぇ!!

相変わらず職場での緒川支部長は好きにはなれない。

けれど、それもまた大好きな“政弘さん”の一部なのだと思うと、以前ほど大嫌いではなくなったようにも思う。

それでもやっぱり、仕事中は嫌いくらいでちょうどいいのかも知れない。

甘くて優しくて、少し意地悪な“政弘さん”は、自分だけが知っていたい。

仕事中にまで大好きな“政弘さん”がそばにいたら、仕事が手につかなくなるかも、と思いながら、愛美はパソコンに向かう。



若くて仕事ができてイケメンで俺様で…なんて、胡散臭い男は大嫌いだと思っていたのに、よりによって大嫌いだったはずの緒川支部長と付き合っている。

よくある漫画や小説みたいに、オフィスで出会い、オフィスで恋が芽生え、オフィスでこっそりと愛を育んできた訳じゃない。

愛美は覚えてはいなかったけれど、二人が初めて会ったのは会社ではなかったし、何より、好きになったのは仕事中の俺様な彼ではなかった。

職場での俺様な姿は、愛美の好みに近付くために彼が作り出したものだとしても、偽装とは言え俺様な緒川支部長は嫌いだし、きっとこれからも好きにはなれそうもない。

だけど、仕事を離れた時の、普段の甘くて優しい彼が、たまらなく好きだ。


これは社内恋愛と呼べるのか。

二人の勤め先が同じ会社なのだから、そうとも呼べなくもない。

それでもやっぱり、社内恋愛と呼ぶには違和感がある、と思う。


そもそも、職場に出会いは求めていない。

職場での甘い誘惑も、残業中の秘密の逢瀬も望んでいない。

職場にあるのは、仕事としがらみと、お節介な優しい人たちとの少し面倒な人間関係だけだ。



愛美は思う。



愛情は、オフィスの外で、甘くて優しい彼と二人っきりで育もう、と。



そしてきっと、オフィスで仏頂面の彼に大量の仕事を任される度に、心の中で叫ぶのだろう。




『オフィスにラブは落ちてねぇ!!』