口を開きかけたとき、七倉さんが先に言葉を発した。
「テニスしてるの?」
「え?」
頭ひとつ分高い七倉さんの顔を、きょとんとして見上げると、
「背中に背負ってるの、テニスのラケットでしょ?」
ラケットを指差して、七倉さんはもう一度聞いた。
「はい。そうです!」
突然の七倉さんからの質問に、やけに力を込めて答えてしまって、恥ずかしくなって俯いた。
そんな私に気づくことなく、七倉さんがまた質問する。
「テニス、楽しい?」
凪いだ湖の水面のように穏やかな七倉さんの声に、さっきまでの浮ついた気持ちが一気に静まる。
穏やかな気持ちで、私は答えた。
「はい。楽しいです」


