「え?俺、即興ラップなんてできませんから」
慌ててマッシーさんに言う。
Soul Loversとして、完璧に作られたメロディーにのせて、作られた言葉を連ねるだけのラップなら歌ったことはあるけど。
こんな耳の肥えた玄人ばかりが集まる場所で、しかも即興ラップなんて、とてもじゃないけど披露する勇気は無い。
慌ててステージから逃げようとする俺の首に、ガシッと腕を回したマッシーさん。
「上手いとか下手とか関係ねーんだよ、青年。今の思いをぶちまけろ!!」
溢れる音の渦に飲み込まれるように、真っ白になった頭で言葉を連ねる。
心の中でくすぶってる違和感も、
もどかしさも、
足掻いても、足掻いても、絶対的に足りない自分の実力に対する悔しさも。
ブツッと途絶える音。
「はー」という、俺の細く長い息がマイク越しに店内に響く。
ルールも何も無いめちゃくちゃなラップを、ここにいる皆が盛大な拍手と笑顔で称えてくれた。
マッシーさんを見ると、満足そうな笑みを浮かべて、
「下手くそだな」
そう言って、俺の頭を乱暴にぐりぐり撫でた。


