「照れてんじゃねーよ」
表情が曇る私に、悪戯っ子みたいな顔でそう言った陽希は、
「ま、俺も照れてるけどな」
照れくさそうに頭を掻いた。
そして、
「ぐだぐだ言ってねーで、土曜日は夢の国。これ、決定事項な」
物語の中の王子様みたいに甘い顔をした、私の大好きな人は、
まるでゲームのラスボスみたいな悪役顔で、私を見た。
優しい顔も、困った顔も、意地悪な顔だって。全部私に向けられてるって思ったら、嬉しくて体中が熱くなる。
血が逆流したみたいに真っ赤になった私を見た陽希は、
「照れんなよ。亜理紗が照れたら、俺の方が恥ずかしくなる」
そう言って、私の頭を乱暴にくしゃっと撫でた。
シンデレラみたいに、可愛い女の子にはなれないけど。
ドラマチックな展開も、燃えるように激しい恋もないけれど、
私にとっての王子さまは陽希だから。
「好きだよ、陽希」
―END―