「亜理紗のこと、今すぐ恋の対象として見れなくても、俺、亜理紗といるの、すごく楽なんだ」
「なによ、それ。だったら私、完全に恋の範疇外じゃない」
頬を膨らませて拗ねてみせると、
「怒んなよ。けど亜理紗以外にはいないんだ。一緒にいて、俺がこんなに自然体でいられる女の子は」
恋の相手には、ほど遠いけど。陽希にとって、唯一の女の子だって言われたみたいで嬉しくて、今までの怒りが消える。
陽希は「機嫌がなおったか?」って聞きながら、私の涙を指で拭った。
その仕草にドキッとする。
透き通る、茶色の瞳が私を映す。
「それに亜理紗、夢の国のプリンセスが好きだっただろ?」
陽希の言葉に驚いて、目を見開いた。
「中学の時から、シンデレラ、好きだっただろ?」
そう言えば、中学生の頃、陽希にそんな話をしたなと思い出す。
「機嫌直して、夢の国のシンデレラ城に行きませんか?お姫様」
物語に出てくる王子様みたいに綺麗な顔で、片膝をついて私を誘う陽希。
まるで自分が、本当のお姫様になったみたい。
「仕方ないわね」
目の前の陽希にドキドキするのに、
私の口から出たのは、プリンセスとはほど遠い言葉で、
こんな時すら、素直に甘えられない自分が悲しかった。


