歩き始めて3時間。息も絶え絶えの俺の耳に、
「情けないわね」
バカにするような梨央の声が聞こえた。
「なんで、そんなに元気なんだ?」
梨央の底知れぬ体力に圧倒される。
「富士登山は、もう6回制覇してるわ」
登山の疲れを感じさせない優美な笑顔で、にっこりと微笑む梨央。まさに女神の貫禄だ。
「ほら、頑張って!」
膝がガクガクする俺の背中を、梨央が押す。
「最高にhappyなこと、教えてくれるんでしょ?」
折れそうなくらいに細いのに、俺なんかより全然強い。
へろへろになりながらも、梨央の両腕に支えられながら、果てしない山道を歩く。
「ほら。ここから見る下界の景色は綺麗でしょ」
「景色なんか、見てらんねーよ」
「図体と態度はでかいのに、情けないわね」


