一応、私が一般人ってことで、私の顔が映らないアングルで上手く撮影されているけど、
この背格好。この動き。
なによりも、このしゃべり方で、身近な人ならすぐに、この女の子が誰か気づくだろう。
「はぁー、憂鬱だな」
制服に着替えてため息をつくと、兄が私の頭にでっかい手をポンと置いた。
「何かあったら俺を呼べ、学校だろうが、テニスコートだろうが、どこにだって飛んでって助けてやる」
頼もしくて、力強い声。
そして兄の顔に浮かぶ、底抜けに明るい笑顔に、不安が吹き飛んで「うん」と頷く。
「いってこい、雛子。七倉の次はお前の番だ!」
兄の言葉に全身がピリッと引き締まる。
そうだ。周りの空気に流されて、動揺してる場合じゃない。
今日は、テニスの全国大会の日だった。


