『雛子ちゃん』 私を呼ぶときの、彼の綺麗な声が好き。 私を見詰める、力強い眼差しが好き。 目を閉じて思い出すのは、七倉さんのことばかり。 「雛子ちゃん?」 彼とは違う、色素の薄い、柔らかい眼差し。 「ねぇ、雛子ちゃん。いいかな?」 彼とは違う声。 「いや!!」 私はウインドブレーカーを押し付けるように菅君に返すと、教室を飛び出した。 「あーあ。はるのヤツ、振られてやんの」 からかうような、友達の声が遠くに聞こえた。