からかうような口調でそう言う菅君に、お腹の中が熱くなる。



「七倉さんは、皆が言うような遊び人なんかじゃない!」



怒りが、制御できない。



「七倉さんは、皆が言うようないい加減な人じゃない。どんなに辛い時だって、自分のことより人のことを考える。優しくて誠実な人よ。七倉さんを知らないくせに、悪く言わないで!!」



一息に言い切ると、そんな私を冷静に観察するように「ふーん」と言った菅君は、



「そんなに好きなんだ?七倉さんが」



ちょっと眉を動かした。



からかうような口調から一転、真面目な声音の菅君に「しまった」と思う。



もしかして菅君は、私と七倉さんの関係に気付いたかもしれない。



ただでさえ嘘の噂で固められて、悪いイメージがついてしまった七倉さん。



そんな彼が付き合っていたのが、こんな冴えない普通の女子高生だなんて知られたら、また1つ、七倉さんの名前に傷がつく。



この重い空気をどうしよう?と考えてたら、



「真下さんって、そんなに七倉ハルのファンなんだ。可愛いな。意外とミーハーなんだね」



さっきまでの真面目な口調が嘘みたいに、菅君が明るい口調で言った。



「ごめんね。好きな人のこと、悪く言われたくないよね」



ふわりと笑った菅君に、ただ首を横に振ることしか出来なかった。