「なに飲む?ビールか?ワインか?焼酎か?雛子はオレンジジュースな」
兄が梨央さんに聞いた。その言葉を離れたところで聞いていた伊織さんが、
「焼酎はねーぞ」
すかさず突っ込んだ。
チラッと伊織さんを見た梨央さんは、
「コーヒー」
すらりと伸びた長い脚を組みながら、冷たく答えた。
「伊織!コーヒーとオレンジジュースとビール!大至急!!」
梨央さんの冷たい態度にもめげることなく、元気よくそう叫ぶ兄。
伊織さんは、慣れた様子で「はいよ」と返事をして、カウンターの奥へと消えた。
元々、客としてコーギーに来ていた伊織さんは、時々ここでバイトをしている。
けど今の時間、コーギーは開店前の準備中で、兄が一方的に伊織さんをこき使っているだけだろう。
伊織さん。横柄な兄で、ごめんなさい。
心の中で謝った。


