「何言ってるんですか。私、二年八組の黒須(くろす)ですよ。この前の宿泊学習の登山でご一緒したじゃないですか。生徒の顔忘れるとか、ひどーい!」
私はしれっと偽名と嘘を言った。
先生の名前も、最近あった行事も、全部調査済み。
「そ、そうだったな、そうだ、黒須さんだ。悪い悪い。やばいな、俺も年かな……」
「しっかりしてくださいよー?」
「あぁ、すまないな。じゃぁな」
「はーい」
軽く手を振ると、先生も去っていった。
プラシーボ効果みたいなのを利用したやり方。
最初にそれっぽい事を言ってしまえば、相手も「そう言えばそうだっけ」と自分の記憶を塗り替える。
相手を気遣う優しい気持ち、「相手が言うならそうなんだろうな」っていう考えを利用したけど、簡単だったな。
クラス名簿を調べられちゃえばバレるけど、その場しのぎにはうってつけの技だ。
偽名も使ったし軽く変装してるし、まぁしばらくはこの方法でイケるでしょ。
「タイム……あんた詐欺師になれるよ……」
あたしには無理、と美色が怯えたように首を横に振った。
詐欺師ねぇ……そこまで悪い事してるかな?(※してます。現時点でも不法侵入です)
おっと、それよりも。
私達の目的は叶海ちゃんを探して調べる事。