「で、なんであたし達ここにいるの?」

美色がゼリータイプのスポーツドリンクを啜りながらこの場を一瞥する。

その声も聞き取りにくいくらいの人々の声、まだ五月だってのに夏みたいに暑苦しい熱気。

あと快晴の空に響く吹奏楽部の金管楽器の音と、カキーンという清々しい音。

そして配られた首に巻くタイプの細くて青いタオルと安っぽいプラスチックを丸めたような拡声器(メガホン)。

そう。ここは野球場だ。

「あ!打った!打った!行ったァー!!……あー、なんや、ファールかいな~……しっかり打たんかい阿呆!!」

私は野球はあまり興味無いから、ルールとかよく分かんないんだけど、綺鳴を見る限りうちの野球部が劣勢のようだ。

野球好きなのかな?

「ねー、キナリん。何が分かったの?事件に関係あるのこれ?」

興味が失せかけてスマホをいじり始める美色。

「関係ありありや。よお考えてみ?涼村くんは学ランを着とったから男子やと思っとったやけで、ハッキリ顔を見てへん」

「……学ラン着た、女の子かもって事?」

それならなおさら目立っちゃうじゃん。

第一、そんな子いる?